いよいよ12月31日。
東急ジルベスターコンサートの本番当日である。
合唱団は午後3時にオーチャードホールに集合。
ゲネプロを終えると後は本番を待つのみ。
前日のオケあわせでは、急遽合唱部分もカットすることが決まった。
みんなちょっと浮き足立つ。
「大丈夫かな?」「オーバーだけはしたくないよぉ」
いろんな言葉があちこちでささやかれる。

「時間のことはコバケンに任せて!
わたしたちはみっともない演奏をしないことだけ考えればいいの!」
練習指揮者の一言。ごもっともです。ちょっと反省。


そして本番の演奏。
司会の内藤剛志さんと大江麻理子アナウンサーの紹介で演奏が始まった。
出だしはバリトン独唱から。そして男声合唱が続く。
ここのひと声で男声がビビッてると思われたら後が台無しになる。

"Freude!!"

すると小林先生が男声を見てニッコリと笑う。
(よし!男声いいぞ!)
という小林先生の声が聞こえてくるようである。
この笑顔に弱いのは何も女声ばかりではないのだ。

演奏のテンポはいい意味で普段の小林先生どおり、
各フレーズもたっぷり聞かせている。
指揮台に置いた時計をちらちら見るのは無理もないか。
歌っている合唱団はもちろん時計など見ていないから、
今どのくらいの時間が過ぎているのかまったくわからない。


"vo・・・r Go・・・・・・・・・・・・・・tt!!!"・・・・・・・・・・・・・・・・・・
フレーズの切れ目のパウゼが気が遠くなるほどの長さに思える。
そんなことを思いつつも演奏は進む。
マエストロのいつにもまして鬼気迫るタクトにいつしか時間のことも忘れた。


"Freude, schö・・・・・ner Gö・・・tterfunken!
Gö・・・tterfunken!!!"


ついに合唱部分が終わる。
演奏はあと10数秒のはず。
今にもクラッカーが破裂するのではないかと胸はドキドキ。
演奏の勢いはすでに時間調整できるようなものではない。
このまま突っ走るのかコバケン!
オーケストラが最後の音を刻む。
そしてクラッカーが破裂!

Happy New Year! "photo:K. Miura"



ハッピーニューイヤー!!!


オーチャードホールは驚愕の拍手に包まれた。
これ以上はない大成功。
小林先生は舞台の上で本当に嬉しそうに飛び跳ねながら
オーケストラ団員と握手をしている。
我々合唱団は、先生のところへ言って一緒に喜びたい気持ちをこめつつ
舞台の上から、手が痛くなるほどの拍手を送った。
ああこれでうまいビールにありつける・・・。

その後は元旦の明け方まで、
武蔵野合唱団と小林先生がこれ以上はない歓喜に包まれつつ、
大いにビールのジョッキを傾けたのは言うまでもない。

東急ジルベスターコンサート。
情熱的で自由奔放といわれるマエストロ小林の指揮の裏側に、
ストップウォッチも寄せ付けない繊細で緻密な計算と集中力があることを
まざまざと感じさせてくれた演奏会だった。  (終)

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